この度は、WHOの「伝統的知識、生物多様性、健康に関する対話」（2025年10月1日～2日、カナダ・オタワで開催）の関連資料に基づき、主要な論点と政策的な含意を整理しました。
本対話は、WHOが今後策定する「先住民の知識、生物多様性、健康に関する枠組み（Framework）」の共同開発における重要な一歩と位置づけられています。
以下に、主要な論点5点とそれぞれの政策的な含意を説明します。
引用
Strengthening Indigenous-led engagement in global health and biodiversity governance
Photo credit: Jacques-Elie DonA two-day Dialogue on traditional knowledge, biodiversity and health, held on 1–2 October ...
www.who.int
WHO会議の主要論点、合意事項、および今後の検討方向
| No. | 主要な論点・合意事項・今後の検討方向 | 専門用語の補足 | 政策的な含意（何が動きそうか／何が変わりそうか） |
|---|---|---|---|
| 1 | 先住民主導の関与（Indigenous-led engagement）の強化と「枠組み」の共同作成 | グローバルヘルスガバナンス（世界の保健政策決定）の仕組みは、信頼、パートナーシップ、共創に基づき、先住民のリーダーシップを不可欠な要素として組み込む方向に移行するでしょう。 | |
| 2 | 先住民の権利尊重の重視とFPICの原則化 | FPIC：事前の、自由な、かつ十分な情報に基づく合意（権利を尊重した同意プロセス）。 | 研究、医療実践、生物多様性に関連するプロジェクトにおいて、先住民のFPIC（事前の、自由な、かつ十分な情報に基づく合意）が、国際的な標準的かつ法的な要件として確立されるでしょう。 |
| 3 | 健康と生物多様性の全体論的理解 | 医療・公衆衛生プログラムは、個人の健康だけでなく、環境の健全性（土地、水、生物多様性）も健康の必須要素と見なすワンヘルス（One Health：人と環境の健康を一体と捉える）の考え方をさらに深く取り入れるでしょう。 | |
| 4 | 文化的安全性とデータ主権の確立 | 文化的安全性：先住民が自身の文化を尊重され、安全であると感じられる医療・研究環境。データ主権：自身のデータに対する所有権と管理権。 | 医療提供システムや研究機関は、先住民の文化や知識体系を尊重するための文化的安全性の確保と、データ利用における先住民の主権を保証する規範を策定する必要に迫られるでしょう。 |
| 5 | 共同作成されたWHO枠組みの国際的な共有と展開 | このWHO枠組み（先住民の知識、生物多様性、健康に関する枠組み）が正式に採択・公表されると、伝統医学、生物多様性、公衆衛生の国際的な連携に関するWHOおよび加盟国の活動における具体的な行動指針（尊重ある関与のための青写真）が確立されるでしょう。 |
補足情報：今後の検討方向の詳細
この対話の成果は、草案となる「先住民の知識、生物多様性、健康に関するWHO枠組み」に反映され、今後2つの主要な国際会議で先住民と共有される予定です。
- 生物多様性条約第8条(j)に関する補助機関の第1回会合（2025年10月27日～30日、パナマ）
- 第2回WHO伝統医学グローバルサミット（2025年12月17日～19日、インド）
これは、伝統医学（Ayurvedic physicianがWHOの役員として参加していることから、その知見も含まれる）と現代科学を統合し、人々と地球の健康に貢献するための具体的な取り組みを推進する動きの一環です。
引用
Strengthening Indigenous-led engagement in global health and biodiversity governance
Photo credit: Jacques-Elie DonA two-day Dialogue on traditional knowledge, biodiversity and health, held on 1–2 October ...
www.who.int
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