厚生労働省令和7年度補正予算案総額2兆3,252億円を計上医療・介護・福祉の持続的提供体制確保へ

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厚生労働省は、令和7年度補正予算案として総額2兆3,252億円を計上しました。これは、「強い経済」を実現するための総合経済対策の一環とされています。特に、医療・介護・障害福祉分野の持続的なサービス提供体制の確保と、次なる感染症危機への備え、医療DXの推進などに重点を置いた予算編成となりました。

引用

予算案の主要施策は「医療・介護等支援パッケージ」（1兆3,649億円）を柱とし、国民の生活の安全保障や未来に向けた投資拡大を目指すものです。

主な論点と政策的な含意は以下の通りです。

医療・介護・福祉分野における人材確保と処遇改善を支援します。
- 政策的な含意：他産業との賃金格差を是正し、人材流出を防ぐことで、地域に必要なサービス提供体制の維持が図られます。
医療需要の変化を踏まえた提供体制の構造改革と機能強化を推進します。
- 政策的な含意：医療機関の連携・再編・集約化を加速するとともに、出生数の減少等に対応した周産期・小児医療体制の確保が進みます。
医療・介護分野のデジタルトランスフォーメーション（DX）を加速します。
- 政策的な含意：医療情報の共有や資格確認が円滑化し、現場の業務効率化と質の高いサービス提供が実現します。
医薬品の安定供給体制を強化し、創薬力の向上に向けた投資を実施します。
- 政策的な含意：国内での医薬品安定供給体制が強化され、日本発の革新的な新薬の実用化を促進する創薬基盤・インフラの整備が加速します。
生活困窮者への自立支援機能の強化や、地域共生社会の実現に向けた取り組みを推進します。
- 政策的な含意：地域住民が抱える様々な生活課題に対し、福祉事務所や自治体が連携し、きめ細やかな支援を提供できる体制が整備されます。

賃上げ・物価高騰対策に重点

「医療・介護等支援パッケージ」では、医療機関・薬局における賃上げ・物価上昇に対する支援として5,341億円を計上しました。特に救急医療を担うなど医療機能の特性を踏まえ、物価上昇への的確な対応や、物価を上回る賃上げの実現を支援します。

病院に対しては1床あたり賃金分8.4万円、物価分11.1万円が基礎的支援として設定されています。救急に対応する病院には救急車受入件数に応じた加算が設けられています。また、有床診療所や保険薬局なども支援対象に含まれます。

介護分野では、職員の賃上げ・職場環境改善に1,920億円を充当します。人材流出を防ぐ緊急的対応として、介護従事者に対して幅広く月1万円の賃上げ支援を実施します。さらに、生産性向上や協働化に取り組む事業者の介護職員には、月0.5万円が上乗せされます。

医療提供体制の維持と再編

地域医療構想の推進のため、病床数の適正化を進める医療機関に対し、3,490億円を投じ「病床数適正化緊急支援基金」を創設します。これにより、地域の医療ニーズを踏まえた医療機関の連携・再編・集約化を加速します。

また、出生数の減少に対応し、産科・小児科への支援として72億円を計上しました。地域で安心・安全に出産できる周産期医療体制や、救急を含む小児入院医療が実施できる体制の確保を図ります。

DXの加速と情報基盤の整備

医療・介護の確保とDX推進のため、合計で2,277億円が投じられます。

全国の医療機関や薬局をつなぐ「全国医療情報プラットフォーム」開発事業に74億円を計上します。電子カルテ情報共有サービス等を通じて、保健・医療・介護の情報共有基盤を構築します。

マイナ保険証の利用促進に向けた支援は224億円です。システム改修や顔認証付きカードリーダーの導入費用を補助し、円滑な移行と利用定着を図ります。公費負担医療制度等のオンライン資格確認の推進には46億円を充当します。

介護情報基盤の整備には125億円が投じられます。介護情報基盤の開発や、介護事業所等の利用環境整備を支援し、業務効率化と介護サービスの質の向上を推進します。

創薬力と安定供給の確保

医薬品の安定供給確保と創薬力強化に向けた施策には、総額1,527億円が充てられます。

後発医薬品産業の構造改革を促進するため、「後発医薬品製造基盤整備基金」に844億円を造成します。品目統合・事業再編に向けた設備投資などを支援し、品質確保と安定供給を実現します。

また、革新的な医薬品の実用化を支援するため、国庫と民間からの出えん金で「革新的医薬品等実用化支援基金」を造成し、241億円を支援します。日本発の革新的医薬品の創出を促進する狙いです。

海外依存度の高い人工呼吸器の国内生産体制強化には25億円が、抗菌薬等や感染症対症療法薬の備蓄体制整備には16億円が充てられます。

公的給付と福祉支援の強化

生活保護制度に関連する平成25年生活扶助基準改定の最高裁判決への対応として、1,475億円が計上されました。原告・原告以外を区別せず、高さ調整▲2.49%の水準で一律に追加給付を実施します。

生活困窮者自立支援の機能強化には54億円を充てます。NPO法人等との連携強化や、特例貸付の借受人に対するフォローアップ支援体制の強化などを図り、生活困窮者の早期の自立を目指します。

集団予防接種によるB型肝炎ウイルス感染被害者等への給付金等の支給には、1,198億円が計上されています。

感染症危機への備えと国際協力

次なる感染症危機等に備えた体制強化として、国立健康危機管理研究機構の機能強化に42億円が充てられます。プレパンデミックワクチンや感染症危機対応医薬品等（MCM）の確保には85億円が投じられます。

国際保健分野では、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ（UHC）等の推進のため、関係国際機関への拠出に319億円が充てられます。これには、世界エイズ・結核・マラリア対策基金への拠出162億円、感染症流行対策イノベーション連合（CEPI）への拠出85億円などが含まれ、国際的な感染症対策と日本の貢献を推進します。