【血液事業の裏側】日赤で半年間に重大事態５件発覚：新血小板製剤導入で生じた緊急の課題と経営層が知るべき輸血管理の矛盾

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本会議（タイトル）は薬事審議会血液事業部会令和７年度第２回運営委員会を議論しました。

この会議における主要な論点、合意事項、および今後の検討方向を以下の5点に整理し、それぞれの政策的な含意を説明します。

引用

薬事審議会血液事業部会令和７年度第２回運営委員会議事録

1. 日本赤十字社における連続重大事態への対応とガバナンス（組織統治）の抜本的強化

令和７年５月から９月にかけて、新鮮凍結血漿（FFP）の保管温度逸脱（13,748本が使用不能）や、献血血液の搬送遅延（39名分が使用中止）、採血針の誤使用など、連続して５件の重大事態が発生しました。原因として、設備工事事業者が規格外の部品を使用した問題や、搬送委託事業者（アウトソーシング先）の駐車場所失念と連絡不備、職員による人為的な電源の入れ忘れや針の廃棄失念などが挙げられ、日本赤十字社は組織的な監督責任や、インシデント（事故につながりかねない事態）報告文化の希薄さを認めました。

政策的な含意（何が動きそうか／何が変わりそうか）
再発防止策として、血液事業本部内に安全推進チームが設置され、委託事業者への教育・管理基準の徹底を含めた組織全体の安全文化と業務手順の厳格化が加速します。

2. 細菌スクリーニング済み血小板製剤（BS製剤）導入後の初期課題の解消

令和７年７月30日に供給が開始された細菌スクリーニング済み血小板製剤（BS製剤）は、初期の真の細菌検出率が0.019％（4万6,946本中9本）であった一方、導入直後に血小板製剤の単位数不足が増加したこと（導入前約3％→導入後約10％前後）や、凝集（血液が固まること）による減損率（廃棄率）の地域差が課題として報告されました。特に、培養検査が陰性であったにもかかわらず、採血５日目に親指大の大きな凝集塊が現れ、後に黄色ブドウ球菌が検出された事例があり、医療機関への注意喚起が行われています。

政策的な含意（何が動きそうか／何が変わりそうか）
血小板製剤の製造条件や保管条件の調整、および輸血情報による注意喚起の強化を通じて、より安全な血小板製剤の安定供給に向けた製造プロセスの改善が進められます。

3. 若年層献血者の確保に向けた広報戦略の転換

令和6年度の報告では、輸血用血液製剤の供給量は安定していたものの、20代・30代といった若年層の献血者数が低下傾向にあることが再び指摘されました。このため、献血推進調査会では、若者に献血を「自分事化」させる新しいキャッチコピー（THINK！献血）の展開や、波及性の高いアニメーションの活用、「はたちの献血」キャンペーンにおけるインフルエンサーとのコラボレーションなど、新たな発想の広報活動が必要であると提言されました。

政策的な含意（何が動きそうか／何が変わりそうか）
献血者の将来的な確保に向け、SNSやデジタルマーケティングを活用し、若者層に直接届くような広報戦略に、より多くの資源と創造性が投入されることになります。

4. 輸血管理料加算（診療報酬）と臨床ガイドラインの整合性に関する検討

血液製剤使用実態調査では、輸血管理料および適正使用加算を取得している施設は、輸血管理体制が堅実に構築されていることが確認されました。しかし、大量出血時の輸血ガイドライン（赤血球製剤と新鮮凍結血漿（FFP）を1対1の割合で輸血するなど）に厳密に従ってケアを行う施設が、診療報酬上の適正使用加算の取得要件を満たせないという「ねじれ」が生じていることが課題として提起されました。

政策的な含意（何が動きそうか／何が変わりそうか）
救急医療など大量輸血を実施する臨床現場のニーズに応えるため、診療報酬制度（輸血管理加算の要件）や関連ガイドラインの見直し・検討が求められることになります。

5. 梅毒および新興感染症の世界的な動向に対する警戒強化

感染症の定期報告において、欧米でのヒトパルボウイルスB19の再流行や、中国でダニ媒介性の新規オルソナイロウイルス（Wetland virus, Xue-Cheng virusなど）が発見されたことが報告されました。特に、米国では過去11年間で献血者における梅毒（トレポネーマ）陽性率が着実に増加傾向にあり、日本においても梅毒の発生動向を継続的に注視すべきであるという警告がなされました。

政策的な含意（何が動きそうか／何が変わりそうか）
血液製剤の安全性を確保するため、梅毒の流行状況や新たなダニ媒介性ウイルスの国際的情報を継続的に監視し、献血者への問診や検査基準の警戒水準が維持されます。