メンタルヘルスをすべての政策に　ＷＨＯ、具体策とロードマップ示す

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世界保健機関（ＷＨＯ）は２０２５年１１月２４日、政府の全セクターにおけるメンタルヘルスを保護し促進するための政策と戦略的行動に関する新たなガイダンスを発表しました。

引用

これは「全政策におけるメンタルヘルス」（mental health in all policies）アプローチに向けた重要な一歩となります。

この新たなガイダンスは、政府の異なるセクターが、国民全体のメンタルヘルスとウェルビーイングを促進し保護するために、個別かつ協働して何ができるかを初めて明確に示したものです。

ＷＨＯは、メンタルヘルスに関する考慮事項を、中核となる政策、戦略、およびプログラムに統合するよう、政府全体の省庁や機関に具体的な指針を提供しています。

この発表は、既存の「メンタルヘルス政策と戦略的行動計画に関するＷＨＯガイダンス」に基づいていますが、その焦点はメンタルヘルス部門の枠を超えて拡大されています。

このガイダンスが打ち出す主要な論点と、各国政府における政策的な含意は以下の５点に集約されます。

１．「全政策におけるメンタルヘルス」アプローチの採用 ＷＨＯは、メンタルヘルスが単なる保健医療の課題ではなく、政府全体の共通課題であるとの認識を確立しました。政策的な含意としては、メンタルヘルス対策の責任が専門部門に限定されず、内閣や財務当局など政府全体で分担されるようになります。

２．１０の主要セクターへの具体的な行動指針の提供 文化・芸術・スポーツ、教育、雇用、環境、司法など、１０の主要セクターそれぞれに対し、特定の政策指令や戦略的行動が示されました。政策的な含意としては、広範な行政分野において、メンタルヘルスを積極的に組み込んだ政策や戦略の策定が義務化される可能性があります。

３．人権、公平性（エクイティ）、エビデンスに基づく原則の強調 このガイダンスは、人権、公平性、そして科学的根拠に基づいて策定されました。政策的な含意としては、メンタルヘルス政策を構築する際、個人の権利と公平なアクセスが最も重要な基盤となり、より包括的で証拠に基づいたサービス提供体制が求められます。

４．コスト意識と投資の社会的利益の明示 ガイダンスは、メンタルヘルス対策への「行動しないことのコスト」と、投資を行うことによる「社会的利益」の両方を強調しています。政策的な含意としては、メンタルヘルスへの支出がコストではなく、社会全体の生産性や安定性を高める投資として認識され、予算配分が強化される可能性があります。

５．政府全体・社会全体での連携と持続可能な資金調達の要請 セクターを超えた上級指導者や関係者、推進役が一体となり、協働を促進する「政府全体」および「社会全体」のアプローチを強く求めています。政策的な含意としては、省庁間の連携を強化するためのハイレベルな横断的イニシアチブが確立され、メンタルヘルス対策に対するアカウンタビリティと持続可能な資金調達の仕組みが確保されるでしょう。

このガイダンスでは、メンタルヘルスを保護・促進するための政策を構築し維持できるよう、政府の全セクターを支援するためのロードマップも示されています。

ロードマップには、コミットメントを実行に移すための８つの実用的なステップが概説されています。

これには、ハイレベルな対話の開始や、既存政策の見直し、進捗の実施、モニタリング、そして評価が含まれています。

ガイダンスがカバーする１０の主要セクターは以下の通りです。文化、芸術、スポーツ。防衛、退役軍人。教育。雇用。環境、自然保護、気候保護。保健。内務。司法。社会保護。都市・農村開発。

各セクター向けのガイダンスでは、それぞれの国内および地域の実情に合わせて実施を調整し、進捗を測定するために使用できる指標例が示されています。

この文書は、全セクションを含む包括的な文書として提供されるほか、アクセスと普及を容易にするため、セクターごとの個別の刊行物も用意されています。

ＷＨＯは、このガイダンスの策定に協力した専門家、レビュー担当者、そして資金提供パートナーに対し、謝意を表明しています。

メンタルヘルスへの取り組みは、専門家任せではなく、社会全体のインフラを構築する作業へと移行する節目を迎えています。

これは、例えば、建築基準が建物の安全性を保証するように、政府のあらゆる政策が国民の心の健康という土台を保証することを意味するでしょう。