【要約】2025年版ランセット・カウントダウン（保健と気候変動に関する報告書）の資料（WHO）

この度は、WHOと協力して作成された2025年版ランセット・カウントダウン（保健と気候変動に関する報告書）の資料に基づき、主要な論点、合意事項、および今後の検討方向を5つに整理し、それに対応する政策的な含意を説明します。

この報告書は、気候変動への対策の遅れが既に人々の健康と経済に甚大な被害をもたらしているという現状を明確に示すものです。これは、今後の国際的な気候変動対策（例：COP30）において、保健分野が決定的な役割を果たすための重要な証拠基盤となります。

引用

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2025年ランセット・カウントダウン報告書に基づく主要論点と政策的含意
1. 専門家でない方への補足理解のために

2025年ランセット・カウントダウン報告書に基づく主要論点と政策的含意

対象読者：薬局長クラス、医療経営層など専門外でも理解できる方へ

#	主要な論点・合意事項・今後の検討方向	政策的な含意（何が動きそうか／何が変わりそうか）
1	熱関連死亡の深刻な増加：気候変動の影響による熱関連の死亡率は1990年代から23%増加し、年間平均54万6,000人に達しており、特に乳幼児や高齢者の危険な熱波への曝露が過去20年間で4倍になっています。	熱中症などの気候変動に起因する健康被害を軽減するため、地域や医療システムにおける暑熱対策や早期警告システムの強化が不可避となります。
2	気候変動による巨大な経済的損失：熱への曝露により、2024年だけで6,400億時間相当の潜在的な労働時間が失われ、これは1兆90億米ドル（約160兆円）に相当する生産性の損失に繋がっています。	経済活動を守るため、労働環境における冷却・適応措置の導入や、熱ストレス対策への公的投資が強化される可能性があります。
3	化石燃料への過剰な公的補助金：各国政府が2023年に純額で9,560億米ドルもの化石燃料（石油、石炭、ガスなどのこと）への補助金に費やしており、これは気候変動に脆弱な国への支援額の3倍以上にあたります。	化石燃料補助金の削減・廃止が進められ、その財源が公衆衛生や再生可能エネルギー（クリーンエネルギー）への投資へと振り向けられる強い圧力がかかります。
4	健康分野と都市レベルでの気候変動対策の進展：保健分野は2021年から2022年にかけて、地球温暖化ガス（GHG）排出量を世界的に16%削減しており、また加盟国の58%が保健脆弱性と適応（V&A）評価（健康へのリスク評価）を完了しています。	医療機関や地域保健システムは、自らの排出量削減（脱炭素化）と、地域住民に対する気候リスク評価への関与をさらに進めることが求められます。
5	「健康」を気候行動の最も強力な推進力として位置づけ：WHOとグローバルパートナーは、人々の健康保護を気候行動を推進する最も強力な動機と認識するよう呼びかけており、この知見が今後の国際会議（COP30など）の中心的な議論となります。	気候変動対策は公衆衛生・医療政策と一体化し、政策決定過程において医療専門家や保健機関がこれまで以上に重要な役割を担うことになります。