薬剤耐性対策の国際計画が10年ぶり改定へ。日本医療政策機構が意見提出

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日本医療政策機構（HGPI）などは、薬剤耐性（AMR）に関する国際的な行動計画の更新に向けた意見を提出しました。 HGPIとAMRアライアンス・ジャパンは、2025年6月9日、薬剤耐性（AMR）に関するグローバル・アクション・プラン（GAP）の更新に向けたオンラインコンサルテーションで意見を述べました。

引用

このGAPは、AMR対策の国際的な基盤です。 2015年5月に世界保健機関（WHO）総会で採択されました。 GAPは、普及啓発、動向調査、感染予防、抗菌薬の適正化、研究開発の発展という五つの目的を掲げています。この国際枠組みは、国連食糧農業機関（FAO）、国際獣疫事務局（WOAH）、国連環境計画（UNEP）にも承認されています。

GAPの採択後、加盟国は2年以内に国家行動計画（NAP）の策定が求められました。日本でも2016年4月に「薬剤耐性（AMR）アクションプラン 2016-2020」が策定されています。現在は「薬剤耐性（AMR）アクションプラン 2023-2027」のもとで取り組みが進められています。

しかし、2023年末時点で178カ国がNAPを策定しているものの、具体的な予算措置を講じている国は10%に留まっています。 GAP策定から10年が経過し、新たな知見や各国の教訓を反映させる必要性が高まっています。このため、2024年の第79回国連総会において、2026年までにGAPを更新することが国際的に合意されました。

更新にあたっては、いくつかの基本原則が掲げられています。具体的には、ワンヘルスの推進、エビデンスの重視とインパクトの志向、持続可能性・包摂性・公平性、そして行動性と測定可能性です。今後は、2026年5月のWHO総会での正式採択と、2027年12月の国連環境総会での承認を目指し、協議プロセスが進められる予定です。

今回のコンサルテーションでHGPIなどが提出した意見は、今後のAMR対策の方向性を示す重要な論点を提示しています。

１．ワンヘルスに基づく分野横断的なガバナンスの強化 AMR対策は分野横断的に推進される必要があります。ワンヘルス・アプローチに基づく、マルチセクターかつマルチステークホルダーによる協働が不可欠です。グローバルガバナンス体制も同様の視点で取り組むべきだと提言されています。政策的な含意：今後、ヒト、動物、環境など複数のセクターを包括する新たな国際協力の枠組みが具体化するでしょう。

２．抗菌薬の公平なアクセスと社会的資源としての位置づけ 抗菌薬の有効性は、将来世代に引き継ぐべき社会的資源であるとされています。同時に、現在を生きる全ての人々の公平なアクセスも保障すべきだと主張されています。政策的な含意：抗菌薬が単なる医薬品ではなく、人類共通の社会的資源として、国際的な管理・配分に関する議論が進展するでしょう。

３．政策形成における市民・患者の参画促進 AMR対策の政策形成では、患者や当事者、市民を中心とした視点の導入が期待されています。啓発や学修支援をあらゆるライフステージで展開することも求められています。抗菌薬の使用には行動科学的要因も影響するため、人文学や社会科学の知見を取り入れた施策が期待されています。政策的な含意：政策立案過程に、専門家だけでなく市民や当事者の視点を組み込む仕組み作りが加速するでしょう。

４．経済的インセンティブと評価指標の導入 AMR対策の進捗や成果を多分野にわかりやすく示す、評価指標（成果指標およびプロセス指標）が必要とされています。特に、ESG投資や気候変動分野の取組を参考にし、金融機関や民間セクター向けのAMR投資指標やガイドラインの開発が期待されています。また、民間投資を促進するため、AMR対策を含めた関連政策全体の費用対効果や社会的便益の可視化を図る必要があります。政策的な含意：民間投資を促すため、AMR対策への貢献度を評価・可視化する新しい国際的な財務・非財務指標が開発・導入される見通しです。

５．持続的な研究開発（R&D）基盤の確保 新規抗菌薬の研究開発の持続性を担保することが極めて重要です。これを実現するためには、研究者や民間企業の基盤維持が不可欠とされています。強力なプッシュ型およびプル型インセンティブの導入が強く求められています。さらに、優秀な人材の国外流出を防ぐ「頭脳流出」への対策も重要だと指摘されています。政策的な含意：新薬開発を支援するため、公的資金や新たな経済的な優遇措置（インセンティブ）が国際的に整備されるでしょう。

日本医療政策機構は、WHOなどによるGAPのより効果的な更新に向けて、国内外の多様なパートナーと連携していきます。日本および世界における持続可能なAMR対策の深化に貢献していく方針です。