この度は、厚生労働省の「経済社会情勢の変化に対応したキャリアコンサルティングの実現に関する研究会」の資料に基づき、会議の主要な論点、合意事項、今後の検討方向を整理します。
本研究会は、DXの進展や職業人生の長期化といった経済社会情勢の激しい変化に対応するため、キャリアコンサルタント（CC）に必要な能力や、その活用を活性化するための施策について検討を進めています。
以下に、主要な論点・検討方向を5つに整理し、「政策的な含意」を説明します。
引用元
第８回 経済社会情勢の変化に対応したキャリアコンサルティングの実現に関する研究会資料
www.mhlw.go.jp
主要な論点・合意事項・今後の検討方向と政策的な含意
| # | 主要な論点・検討方向（専門用語の補足付き） | 政策的な含意（何が動きそうか／何が変わりそうか） |
|---|---|---|
| 1 | キャリア自律を促す「開発型支援」の重視CCは、問題解決だけでなく、労働者自らが継続的にキャリアを形成する力（キャリア自律）を養うための「開発型」の支援（能力を育てる支援）を行う能力が求められます。これには、経済社会情勢の変化や将来予測を踏まえた助言が含まれます。 | 企業や組織は、従業員の継続的なスキル向上や、変化に対応するためのキャリア再構築（学び直しやリスキリング）を支援する制度設計（人的資本投資）を、より戦略的に進める必要が出てきます。 |
| 2 | 企業内CCによる経営戦略への関与強化企業領域で活動するCCには、社員のスキル習得状況や職場の課題を分析し、その結果を経営層に提供・提案する能力が求められています。これは、人材確保・定着・生産性向上といった経営課題の解決に寄与するためです。 | CCの活動は、単なる個人の悩み相談に留まらず、データや分析に基づいた戦略的な人事・組織運営（人的資本経営）の一部として評価されるようになり、社内の役割と権限が拡大します。 |
| 3 | セルフ・キャリアドック（SCD）導入の支援と定着労働者のキャリア自律を促進する上で有効とされるSCD（企業が労働者に対し定期的にキャリアコンサルティングを提供する制度）について、CCは導入のメリットを企業に伝え、活用を支援する役割が強調されています。 | 企業は、従業員のキャリア意識や保有スキルを定期的に把握・チェックする仕組み（SCD）の導入を、円滑な人材配置や能力開発支援の観点から推進するよう、国から引き続き強く促されます。 |
| 4 | 活動領域ごとの専門能力とAI活用能力の明確化今後のCCには、地域、教育、需給調整（人材紹介・派遣）といった活動領域ごとにより専門的な能力が求められるとともに、AIをはじめとする各種ツールを適切に活用したコンサルティングを行える能力も必要とされています。 | 専門性の高い分野（例：特定の業界や職種）に精通したCCの育成が促進され、企業や組織が求める特定の専門能力を持つ支援者を見つけやすくなることで、CCの質の確保が進みます。 |
| 5 | キャリア支援の成果の可視化と普及啓発キャリアコンサルティング（CCg）の意義や効果を広く周知するとともに、「キャリア自律度」や「エンゲージメントスコア」といった定量的な指標を用いて成果を評価・可視化することが、活用促進に向けて重要であるとされています。 | 従業員へのキャリア支援が、単なる福利厚生ではなく、定量的な経営指標（エンゲージメントや離職率）に直結する施策として位置づけられ、企業はCCgへの投資対効果を測定・改善することが求められるようになります。 |
補足： 本研究会は、令和7年夏頃に中間とりまとめを実施済みであり、今後は最終とりまとめ（令和7年末頃を目途）に向け、残りの活動領域（需給調整、教育、地域）に必要な能力を中心に議論を進めていく予定です。
引用元
第８回 経済社会情勢の変化に対応したキャリアコンサルティングの実現に関する研究会資料
www.mhlw.go.jp
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