【要約】Global report on neglected tropical diseases 2025 （WHO）

WHOの最新報告書（Global report on neglected tropical diseases 2025）の概要に基づき、主要な論点、実績、今後の検討方向を5つに整理し、政策的な含意を説明します。

この報告書は、顧みられない熱帯病（NTDs）（主に主に経済的に困難な状況にある人々が影響を受けやすい感染症のグループ）に対する2030年までのロードマップの進捗を監視するものです。

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No.	主要な論点・合意事項・今後の検討方向	専門用語の補足	政策的な含意（何が動きそうか／何が変わりそうか）
1	NTDの疾病負荷と介入必要人口の明確な減少	DALYs：障害調整生命年。病気による早すぎる死亡や障害によって失われた健康寿命を示す指標。	疾病の根絶・制圧は現実的な目標として維持され、大規模な集団治療（予防的化学療法）プログラムの投資と実施が継続されます。
2	NTD対策における統合戦略と包括的ケアの促進	統合戦略：複数のNTDの対策や、NTDケアを国の主要な医療サービスに組み込むこと。	NTDプログラムは、より効率的で持続可能な医療サービス提供のため、プライマリヘルスケアや国の必須サービスパッケージへの組み込みが加速します。
3	研究開発（R&D）および新製品へのアクセスの推進	プレクオリフィケーション：WHOが医薬品・ワクチンの品質、安全性、有効性を審査し、公的調達の適格性を認めること。	診断薬、医薬品、ワクチンなどの新しいツール（デング熱ワクチンなど）の迅速な開発、規制承認、そして各国への供給体制の整備が国際的な優先課題となります。
4	部門横断的な対応の不足と衛生環境（WASH）の課題	Vector-borne diseases：蚊などの媒介生物（ベクター）によって広がる疾患。WASH：Water, Sanitation and Hygiene（安全な水、衛生設備、衛生習慣）。	医療部門だけでなく、環境部門や公衆衛生部門も連携し、媒介生物対策や安全な水・衛生環境の整備といった多部門にわたる協力体制の構築が必須となります。
5	国際開発援助（ODA）の減少と資金調達の持続可能性	ODA：先進国から途上国への公的資金援助。国内資源動員：国際援助に頼らず、自国の予算や財源で資金を調達すること。	NTD対策の財源確保は、国際援助（ODA）への依存を徐々に減らしていき、影響を受ける国々が主体的に国内予算や医療保険スキームに組み込む体制への移行が期待されています。

専門的な含意の補足

NTD対策は、単なる公衆衛生上の課題ではなく、貧困削減や人権問題にも関連しているため、国連総会やG7/G20といったハイレベルな国際会議でも引き続き議論されています。

この動きは、NTD対策が慈善事業から世界の保健安全保障と経済開発のための戦略的な投資へと位置づけを変えていることを示唆しています。例えば、医療機関や薬局においては、予防的化学療法のための薬剤供給の安定化や、地域医療におけるNTD関連の障害管理ガイドラインの導入が、今後のサービス内容に影響を与える可能性があります。

これは例えるならば、これまで災害時にのみ提供されていた支援物資（国際援助）を、地域の通常のインフラ（国内予算・医療システム）の一部として常設するという大きな構造転換の時期に来ている、と言えます。

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