【2024年世帯調査】「一人暮らし」が過半数へ。加速する高齢世帯の単独化と家族支援の終焉

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2024年（令和6年）に実施された国立社会保障・人口問題研究所による第9回世帯動態調査の結果を用いて整理し考察しました。

引用

世帯動態調査｜厚生労働省

世帯動態調査について紹介しています。

今回の調査結果から、日本の世帯構造の動向について、以下の主要な論点と政策的な含意が考えられました。

主要な論点・今後の検討方向と政策的な含意

1. 単独世帯（一人暮らし）の著しい増加傾向

論点・検討方向:
世帯数の将来推計によると、今回の調査結果（有効回収票の30.3%）でも依然として過小評価されているものの、単独世帯（一人暮らし）の割合は増加が続いています。過去5年間の世帯変動の傾向（推移確率）が継続した場合、継続世帯における単独世帯の割合は53.1%に収束すると試算されており、単独世帯の増加が顕著に加速していることが示唆されます。

政策的な含意:
地域包括ケアシステム（高齢者等が住み慣れた地域で生活を継続できるように支援する体制）において、訪問看護や服薬指導、見守りサービスなどの単身者向けインフラの整備と財源の確保が急務となります。

2. 核家族化・小家族化の進展と親子の同居率低下

論点・検討方向:
親子の居住関係を見ると、40歳以上世帯員全体で18歳以上の子との同居率が低下し（前回51.2%から今回46.9%へ）、また親が生存している場合に同居している割合も低下しました（前回37.1%から今回33.0%へ）。これは、核家族化・小家族化に伴い、親子が離れて暮らす傾向が強まっていることを示唆しています。

政策的な含意:
家族による生活支援や非公式な介護が期待できなくなるため、公的・外部の介護サービスや生活支援サービス（ヘルパーなど）の需要が爆発的に高まり、提供体制の強化が不可欠となります。

3. 高齢者世帯における単独化圧力の極端な上昇

論点・検討方向:
世帯主が65歳以上の高齢世帯に限定すると、世帯変動が継続した場合の単独世帯の収束割合は、全年齢の53.1%を大きく上回り、76.5%という著しく高い水準に達することが示唆されています。また、高齢者世帯主が単独世帯にとどまる割合は96.0%と非常に高く、高齢層で単独化への強い圧力が確認されました。

政策的な含意:
高齢者医療・介護の提供モデルは、夫婦や子との同居を前提とした構造から、超単身高齢者（Super-Solo Elderly）を前提とした、医療・介護一体型のパッケージサービスへと転換する必要があります。

4. 世帯構造変化の加速（「親と子」から「単独」へ）

論点・検討方向:
家族類型の推移を見ると、「親と子から成る世帯」から「単独世帯」へ移行する割合が前回調査（6.8％）と比較して上昇し（10.4％へ）、一方で「単独」から「夫婦のみ」への移行は低下しています。これは、子の独立や配偶者との死別によって世帯が「単独化」する速度が増していることを示唆します。

政策的な含意:
薬局や在宅医療機関が患者の生活環境を把握する際には、患者の世帯類型が変化するタイミング（特に成人子の離家や配偶者の死別）を重点的にモニタリングし、介入の機会を増やす必要があります。

5. 若年層における離家行動の変動

論点・検討方向:
若年層（20歳代）の離家経験者の割合は前回調査と比べて上昇傾向にあり、特に20～24歳の女性や25～29歳の男女で顕著でした。これは、晩婚化・未婚化の影響が引き続き見られる中で、直近の期間において若年層が親元を離れて独立する動きが緩やかに加速した可能性を示唆しています。

政策的な含意:
若年層が親元から独立する年齢が多様化し、生活環境が変化することで、企業や地域における健康診断受診率の確保や、独立直後の精神的・身体的健康サポートのあり方を再検討する必要があります。