最高裁判決受け生活保護基準「高さ調整」見直し　追加給付や今後の改定手続きが明確に

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社会保障審議会生活保護基準部会最高裁判決への対応に関する専門委員会報告書等を踏まえた対応の方向性について（報道発表）

厚生労働省は、令和７年６月２７日に言い渡された生活保護基準の引下げ処分に関する最高裁判決を受け、今後の対応方針厚生労働省は、令和７年６月２７日に言い渡された生活保護基準の引下げ処分に関する最高裁判決を受け、今後の対応方針を固めました。
この対応策は、社会保障審議会生活保護基準部会に設けられた専門委員会（岩村正彦委員長など）の報告書を踏まえたものです。

最高裁判決は、平成２５年の生活扶助基準改定で実施された「デフレ調整」について、判断の過程と手続きに「過誤、欠落があった」として違法と判断しました。
デフレ調整とは、平成２０年以降の経済情勢により生じた生活扶助基準の水準と一般国民の生活水準との間の不均衡を是正するため、物価変動率を指標として基準生活費を引き下げた措置です。
当時の改定では、基準額が４.７８％引き下げられました。
一方、年齢別や世帯人員別などの不均衡を是正する「ゆがみ調整」については、最高裁は適法であるとの判断を示しています。

生活保護法第８条第２項は、保護基準が最低限度の生活の需要を満たすものでなければならないと定めています。
判決は、最低限度の生活の需要を満たすとは、生活扶助においては最低限度の消費水準を保障することを意味すると理解されてきたと指摘しました。
しかし、デフレ調整において、消費実態を把握するのに限界がある物価変動率のみを直接の指標として改定率を定めた点について、「専門的知見との整合性を欠く」とされました。
基準部会等による審議検討を経ていないなど、その合理性を基礎付けるに足りる専門的知見がないと認められたためです。

この判決を重く受け止め、専門委員会は当時の経済状況を再検証し、消費実態に基づいた新たな「高さ調整」の考え方を提示しました。
平成２０年から平成２３年にかけて、リーマンショックの影響などにより、一般低所得世帯の消費水準は大きく落ち込んでいます。
専門委員会の報告書では、この特殊要因を考慮し、平時に近い消費水準を基準とする観点から、影響から一定程度回復した後の水準に補正する方法が示されました。
その結果、平成２５年改定当時までに参照し得た最新データである平成２４年までの変動率に基づく改定率として「マイナス２.４９％」が新たな水準として採用されました。

厚生労働省は、この新たな水準「マイナス２.４９％」に基づき、生活保護法に基づく保護費の追加給付を実施する方針です。
生活保護法第２条の無差別平等原則や第８条第２項の規定を踏まえ、原告と原告以外を区別せず、一律に追加給付を実施します。
給付されるのは、当時実施された改定水準（マイナス４.７８％）と新たな水準（マイナス２.４９％）との差額分です。
なお、判決で違法とされていない「ゆがみ調整」については、追加給付の対象とはされません。

一方、裁判の原告に対しては、係争の経緯と紛争の一回的解決の要請を踏まえ、高さ調整を実施しない水準（０％）となるよう、特別な措置が講じられます。
原告には、保護費に代えて、これに相当する特別給付金が予算措置により支給されます。
この特別給付金は、保護費の追加給付分に、さらに差額分（マイナス０％とマイナス２.４９％の差額）を上乗せする形です。

この追加給付などに要する費用は、概ね２,０００億円前後と見込まれており、現在精査が進められています。
被保護者１世帯あたりの見込み額は、原告以外で概ね１０万円、原告については０％まで支給することで概ね２０万円となる見込みです。
ただし、具体的な金額は世帯の類型などによって変動します。

厚生労働省は、今回の最高裁判決でデフレ調整の判断過程に過誤があったと指摘されたことを重く受け止めています。
今後、生活扶助基準の改定手続きにおいては、同様の問題が生じないよう、特に従来と異なる判断を行う場合には、専門的知見に基づく生活保護基準部会等における十分な審議・検討を経ることが求められています。
基準は最低限度の生活の需要を満たすものであり、厚生労働省は適切な裁量権の行使を行う必要があるとしています。