【厚労省検討会】50人未満のストレスチェック義務化、カギは「外部委託」と「地産保」活用

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本会議はストレスチェック制度等のメンタルヘルス対策に関する検討会であり、主に小規模事業場（労働者数50人未満の事業場）におけるストレスチェック制度実施マニュアル（案）について議論しました。このマニュアルは、令和7年改正労働安全衛生法の施行により、これまで努力義務とされていた小規模事業場でのストレスチェックの実施が義務化されたことを受け、円滑かつ実効性のある制度運用を支援するために作成されたものです。

引用

ストレスチェック制度等のメンタルヘルス対策に関する検討会　第９回資料

この会議で整理された主要な論点・合意事項・今後の検討方向、およびそれぞれの政策的な含意を以下に5つに整理します。

主要な論点・合意事項・今後の検討方向と政策的な含意

	論点・合意事項・今後の検討方向	政策的な含意（何が動きそうか／何が変わりそうか）
1.	小規模事業場に特化した義務化対応と共同実施の推奨：令和7年改正法により、労働者数50人未満の事業場（小規模事業場）においてもストレスチェックの実施が義務化されました。リソースが限られる小規模事業場が円滑に実施できるよう、単独での実施に加え、商工会や協同組合などの業界団体や地域集積型の企業が共同で実施し、事務の集約化や集団分析のためのスケールメリットを追求することが推奨されます。	小規模事業場でもメンタルヘルス対策の初動が必須となり、業界団体や協同組合を通じた包括的な支援サービスが整備される可能性があります。
2.	個人情報保護の徹底と外部委託の標準化：小規模事業場では人間関係が密接であるため、個人のストレスチェック結果が事業者に把握されることへの不安が強く、プライバシー保護が最も重要な課題と認識されています。そのため、マニュアルでは、ストレスチェックの実施や個人結果の保存について、原則として外部機関に委託することが強く推奨されています。	小規模事業場においては、人事権を持つ者が労働者の健康情報に触れないよう、実施体制を外部委託（健診機関など）によって構築することが標準的な運用となり、自社実施の規制・負担は厳格化されます。
3.	面接指導における公的支援（地産保）の活用：ストレスチェックの結果、高ストレスと判定された労働者への医師による面接指導の機会提供は事業者の義務です。労働者50人未満の事業場は、最寄りの地域産業保健センター（地産保：ちさんほ）に依頼すれば、無料で医師の面接指導を受けることが可能です。	経営リソースが限られる小規模事業場に対し、面接指導という医師による重要なフォローアップ体制が公的機関（地産保）によって実質的に担保されることになり、費用の抑制につながります。
4.	集団分析による職場環境改善の推進：ストレスチェック制度の目的である「メンタルヘルス不調の未然防止（一次予防）」を達成するためには、集団ごとの集計・分析（集団分析）結果を活用した職場環境改善が努力義務として重要視されます。ただし、個人が特定されないよう、受検者数が10人未満の集団単位では、分析結果を事業者に提供することは原則として禁止されます。	受検者が10人以上いる部署や職種においては、ストレス傾向を把握した上で、具体的な業務効率化や設備投資、ハラスメント防止研修などの改善策が実施される可能性があります。
5.	社内規程の明確化と不利益取扱いの禁止：労働者が安心して制度を利用し、セルフケアを進めるためには、事業者がストレスチェック制度の導入方針を明確に表明し、受検や面接指導の申出を理由とした不利益な取扱い（例：解雇、不当な配置転換）を一切行わないことを社内ルールとして定め、周知徹底することが必須となります。	事業者は、労働者の信頼を得るために、法令が定める手順（医師の意見聴取など）を経ない一方的な就業上の不利益措置（配置・昇進・評価等）が法違反となり得ることを理解し、メンタルヘルス対策を経営課題として位置付ける必要があります。

専門用語の補足

小規模事業場（しょうきぼじぎょうじょう）：労働者数が50人未満の事業場を指します。
一次予防（いちじよぼう）：メンタルヘルス不調を未然に防止するための取り組みです。ストレスチェック制度の主な目的です。
地域産業保健センター（ちいきさんぎょうほけんセンター、地産保）：労働者50人未満の小規模事業場に対し、医師の面接指導などの産業保健サービスを無料で提供する公的支援機関です。