薬剤師が公衆衛生学大学院を卒業して、医学博士課程に進学した話 #1

薬剤師の公衆衛生大学院体験記

【書籍を出版いたしました!】
薬剤師が公衆衛生大学院に進学した話をまとめて出版いたしました。国内初なのでは??わからないですが!
私の2年間をダイジェストにまとめてワンコインで販売しております。受験対策には全くお役に立てないと思いますが、読み物としてお楽しみいただけましたら大変嬉しいです。

Amazon.co.jp: 薬剤師の公衆衛生大学院体験記 : − 臨床現場を飛び出した2年間の記録 − eBook : 木内 翔太: Kindleストア
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はじめに
 木内翔太です。数ある記事の中から本記事をお読みくださりありがとうございます。
 すっかりご無沙汰となってしまうのですが、SPH卒業後の1年間を振り返っていこうと思います。

 私は薬剤師で、公衆衛生学大学院に進学して卒業しました。卒業後は博士課程に進学しています。現在はすでに博士課程2年になりましたが、1年目を振り返ってキラキラしたところをまとめておこうと思います。

1. 国立研究開発法人 科学技術振興機構(JST) 次世代研究者挑戦的研究プログラム(SPRING) 「グリーントランスフォーメーション(GX)を先導する高度人材育成」プログラム生に選ばれた
 運が良かったとしか言いようがありませんが、SPRING-GXという制度に内定しました。
 これは月額18万円の生活費相当額と年間36万円の研究費が修業年(私の場合は4年間)いただける制度です。本当にありがたいです。経済的にも精神的にも余裕が出ました。
 なによりも「あなたの研究に金を出すから、研究を続けていいよ」と言ってもらえたように感じました。

 実は修士後半は研究が上手くいかずメンタルをやられていて、博士の入試に合格はしましたが、辞めようかと何度も思っていました。これらを乗り越えて今も博士課程に在籍できているのは、この制度のおかげも大いにあります。なお、博士学生の研究者登竜門である、日本学術振興会DCには落ちました。「ですよね〜」という気持ちが強いですが、またぼちぼち挑戦してみます。

2. 薬剤師会の委員に選ばれた
 以前より私の活動を温かく見守ってくれている東京都浅草薬剤師会の先生方よりご推薦いただき、「薬薬連携協議委員」という委員に選んでいただきました。実はこの委員は、私が薬学実習生の時に憧れていたものでしたので、非常に嬉しかったです。同時に地域薬剤師会の活動なども(少しですが)勉強させていただいています。
 これを期に「これからの薬薬連携とはなにか?」を先人に敬意を示しつつ、若者の視点・パブリックヘルスの視点・病院と薬局の両方で働いた経験の視点を活かして、私なりの新しい貢献ができたらと考えています。

3. 初めて国内学会にて学会発表を行なった
 前述の委員の関係で文献調査と地域薬局のニーズ調査に取り組みました。どうせなら学会発表をして、学会員と議論をして考察を深めようと考え、研究プロトコールとして初めて学会発表をしてみました。日本医療薬学会 フレッシャーズカンファランスという若手研究者が発表する学会です。大学院では薬学の学会とは距離がある環境ですので、新鮮でした。
 薬学業界の状況を教えてもらい、私は博士課程卒業後すぐに薬学業界には戻れなさそうだな…と感じました。私が行いたい研究を薬学業界で行うのは難しそうで、パブリックヘルス業界に進路を定めた方がいいかもしれないと思うようになりました(若干、絶望を感じ得ないですが…)。

4. 初めて国際学会にて学会発表を行なった
 前述の国内学会で発表した研究プロトコールを考察まで行い、FAPA(アジア薬剤師連合)の学術大会のOral Presentationに参加してきました。韓国ソウルで開催され、非常に楽しかったです。座長のフィリピンの先生が薬剤師かつパブリックヘルスの方で、「今後も期待している」と言ってもらえたのが非常に嬉しかったです。初めての国際発表でしたが、共同研究者の先生と、IPhaSという団体で研究者とディスカッションさせてもらったおかげでスムーズに発表することができました。

【P-Scribe Lab】0期生 活動レポート 薬薬連携の未来を拓くために論文執筆に挑戦!- そしてアジア最大級の学会で発表!|IPhaS - 薬と社会健康科学研究所
薬局薬剤師として勤務している木内翔太と申します。 P-Scribe Labの0期生として3ヶ月活動させていただいたので、その活動を経ての感想を簡単にレポートできればと思います。 論文執筆に取り組もうと思ったきっかけ 個人で研究を実施できるスキルを身につけたかったためです。 これまで研究計画の立案や学会発表の経験はあ...

4のおまけ 共同研究でたくさん結果を出していただいた
 これは私の力だけではないので載せようか迷ったのですが、まあ載せてもいいかな…と思いまして。以前より参加させていただいている研究班から成果が出始め、私も共著に入れていただいていて大変嬉しいです。
 博士一年目は原著論文1本(Third author)、国内学会発表3本(Second author)でした。ありがたい限りです。関係者のみなさま、いつも勉強させていただいてありがとうございます。

【筆頭】
・Kiuchi, S., Sakaguchi, M. (2024年11月). Exploring Pharmacist Partnerships: A Literature Review and Community Pharmacist Needs Assessments of “Yaku-yaku Renkei” in Japan. Federation of Asian Pharmaceutical Associations 30th Congress.
・木内, 坂口. (2024年6月). 薬薬連携の先行文献レビューと薬局薬剤師のニーズ調査:パイロット研究. 日本医療薬学会 第7回フレッシャーズ・カンファランス.
【共著】
・Arimura, Y., Yanagawa, Y., Kiuchi, S., et al. (2025). Identifying factors for promoting evidence-based policymaking in Japan with the perspective of policymakers, researchers and knowledge brokers: a semistructured interview. Health Research Policy and Systems, 23(1), 48.
・田中,木内ら. (2024年9月). 薬薬連携による入退院時情報共有の現状と課題. 日本薬剤師会 第57回学術大会.
・田中, 木内ら. (2025年3月). セルフメディケーション行動の背景要因の探索研究. 日本薬学会第145年会.
・柴田, 木内ら. (2025年3月). 薬薬連携の課題点を整理する-薬局薬剤師および病院薬剤師、それぞれの入退院時の情報共有から. 日本薬学会第145年会.

5. 初めて学会の委員に選ばれた
 以前より参加している日本プライマリ・ケア連合学会の薬剤師部会の委員になりました。「若手の声を届けて学会運営に活かす」ことが私に求められていることかな、と勝手に考えています。プライマリ・ケアという新しい学問領域に出会えたことが幸運なことです。
 現状は、「プライマリ・ケアとはなにか?」を臨床現場のプラクティスとしては行われているけれども、学問として整理していく作業がまだあまり取り組まれていないのではないかと推測しています。特に薬剤師の視点からプライマリ・ケアを学問的に整理する人はいてもいいのではないかな、と思い、ひとまず私が取り組んでみようと考えています。

第15回日本プライマリ・ケア連合学会学術大会に参加しての感想 木内翔太さん 日本プライマリ・ケア連合学会
日本プライマリ・ケア連合学会

6. 国連フォーラム主催コロンビア・スタディ・プログラムに参加した
 南米のコロンビア共和国に行ってきました。より詳細な経験談はコロンビア・スタディ・プログラムに体験談を掲載しておりますので、そちらをぜひどうぞ。全部自分たちで作っていくプログラムです。現地渡航時、私は世界銀行(World Bank)の担当者にアポイントメントを取って当日ファシリテーターを務めたりと、初めての経験をすることができました(めっちゃ緊張しました)。
 このプログラムで得た一番の収穫は、「Health(健康)をメインで考えることができる幸運」です。健康は平和の上に成り立っている、ということを痛感したプログラムになりました。健康を考えられることは極めて幸運なことなのだと思います。「とりあえず今を生き延びられればそれでいい(健康ということまでは考えが及ばない)」という状況があるのだということを学びました。参加してよかったです。

コロンビア・スタディ・プログラム - 報告書「渡航後:ColSPの経験とその活かし方(木内 翔太)」 | 国連フォーラム
1. 参加動機:参加の動機を教えてください。コロンビアスタディプログラムに参加した動機は、「国際的な視点とは何か」を学びたいと考えたことにある。私は臨床現場で働く薬剤師としての一面と、公衆衛生学(パブリックヘルス)を学ぶ大学院生としての一面を持っている。いずれも「人の健康を考える」ことを使命としている。しかし、これまで...

7. 母校(高校)の保護者にキャリアの話をした
 ありがたいことに、母校の保護者会に卒業生として登壇し、キャリアの話をさせていただきました。自分の話が役に立つかは半信半疑でしたが、迷いながら進んでいる今の気持ちを正直に話しました。参加者の方々からは「大学がゴールではない」「変化が激しい世の中で変わり続けることが重要だ」など私が伝えたいことが少しでも伝わったようで、嬉しく思います。自分が迷いながら進み続けることは当然大事ですが、時々は後進の育成(育成は大げさかもしれませんが)にも微力ながら貢献できると私も嬉しいようです。

おわりに
 博士課程1年のキラキラした内容をまとめてみました。想定よりもキラキラしていますね。このキラキラの裏には悩みやうつ状態があったわけですが…笑
 意外と薬剤師が社会人を辞めて博士課程学生をしたリアル(特にそれなりにリアルタイムでまとめたもの)はインターネットに載っていないのでは…?と考えています。
 私の記事がどなたかのご参考になれば嬉しいです。
 最後までお読みくださりありがとうございました。またお会いしましょう〜!

最後までお読みくださりありがとうございます!下記記事シリーズもおすすめです。
・私が大学院に進学した経験を執筆した「薬剤師の公衆衛生大学院体験記」シリーズ
・読書好きな私が読んで良かった本たちを簡単な感想とともにご紹介する「部長の本棚」シリーズ
・私が使って選抜入りした小道具たちを簡単な感想とともにご紹介する「てくてく道具帳」シリーズ
よろしければお読みいただけますと大変嬉しいです!
※良記事だと思ってくださった場合には、シェアしてくださると大変励みになります!

記事を書いたのは…

木内 翔太(きうちしょうた)

薬剤師、公衆衛生学修士(専門職)。
都内私立大学薬学部(6年制)を卒業後、都内大学病院勤務。その後退職し東大SPHへ進学、卒業。大学院進学と同時に都内薬局でも勤務。現在はフリーランスの自由人。

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