広告の貼り替えを見るのが好きである。私の通勤経路には定期的に張り替え作業が行われる広告がある。コイケヤのお菓子の新商品が大きく貼り出される。私の興味はそのお菓子ではなくて、広告の貼り替え作業である。貼り替え作業にあたるとすごく嬉しい。
貼り替え作業はビルの窓の掃除をするように、人が宙づりになって行う。大体2人1組で行われている。まずは紙のような古い広告を剥がす作業である。これは作業員の方が「えいっ」という感じで、楽しそうである。ここはとにかく剥がしていくことが重要である。次に新しい広告を貼っていく作業である。広告の完成版はとても大きいので、分割された新しい紙をズレがないように丁寧に貼っていく。この作業は前述の剥がす作業と比べて繊細さが求められる。完成して1枚の大きな広告になった時は拍手をしたいくらい見事である。できあがった広告はおよそ1ヶ月くらい仕様され、また新しい広告に貼り替えられる。
毎朝この広告の前を通る度に、作業員の方々を思い描いてしまう。月に1回のひそかな楽しみである。作業員さんたちや見られている広告ですら、私がその作業を楽しみにしているとは思ってもないだろうけれど。
てくてく通信 2025年4月6日号掲載

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著者 部長(ぶちょう)
東大院生。ときどき薬剤師。
忙しい日常にホッと一息を作り出せると幸せ。
好きなことは散歩・読書・地図を眺めること。
やわらかであたたかい言葉を紡げるようになりたい。
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