冬が明け、春がやってくるこの時期。新生活に向け、期待や不安を沢山抱えていた頃は、もう随分昔になる。社会人になってからは、何か始まるような期待と、何も始められなかった自分とのギャップを何度も経験し、春はあまり好きではなかった。
2年前の3月の終わり、大好きな祖母が亡くなった。向かいの公園の満開の桜が、強めの風に剥がされ、地面の上を自由に動く絨毯となった景色が、心にくっきりと残っている。これからは、春が来る度に毎年祖母を思い出すだろう。春が好きになった。祖母との思い出や、満開の桜に応援されながら見送れた事が、大きな意味を持って私の自信となった。何か新しい事を始めても、始めなくても、祖母を懐かしみ、春を楽しみたいと思った。
てくてく通信 2025年4月1日号掲載

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