「スナックてくてく」vol.1

スナックてくてく

ーそのお店は駅からほど近い、住宅街の中にある。

1. 開店
「いらっしゃいませ」
「こんばんは」
今日もマスターはいつもの感じ。
「今日も寒いですね」
「寒いですね。雪が降っているところもあるみたいですよ」
コートを壁のハンガーに掛けていると、すでに私の席の前でおしぼりを広げて待っていてくれる。
「今日のおしぼりは熱いですよ。お気をつけて。」
「ありがとうございます。」
「いつものでいいですか?」
少し言葉に迷った。今日は少しだけ調子が悪かったから…。

2. 回想
寝不足だと夜まで調子が悪いよなあ。
1月14日。世間にお正月の空気感はもう全く残っていない。前々日の13日が成人の日でお休みだったのだけど、年明けの週が忙しすぎてつらかった身としては、しこたまダラダラするしかなかった。少し頑張りすぎてしまっていたのもあるだろう。
たくさん寝るのも、ダラダラするのもいいのだけれど、次の週に持ち越すのはよくないよな…。
YouTubeかなにかで「一流の休み方」なるものがあったりするらしい。休みの日でもダラダラせずにしっかり活動して、しっかり休息をとるようだ。自分とはかけ離れた生活だ。
結局よく眠れず、YouTubeの動画を深夜2時過ぎまで観てしまった。次の日は7時30分起き。後悔先に立たず。
結局、なんとか出社して、眠気をなんとかやりすごしながら研究をする。眠気を抑えながら、時折お供のインスタントコーヒーを流し込んではっきりさせる。
「しっかりとした準備こそがいい結果を生む」
その通りなのだが、自分は準備ばかりで中々行動に移せないタイプのようだ。

「意外と睡眠不足の影響はなかったみたいだな。」
想定よりも溜まっていたタスクを片づけることができた。自分でも意外だ。集中できた。コーヒーのおかげかもしれない。

「おつかれさまでした!」「おつかれ~。」
私が閉店の妨げになってはいけないので、早めに片付けて帰り支度をする。
通勤は自転車15分。自転車が好きな私としては大変楽しい時間だ。冬の空気は自転車に合う。
でも帰り道で急に身体が重くなってきた。カフェインが切れてきたのかもしれない。

結局、家に着いたころにはかなりだるさが出てしまう。
本当は帰宅後に消化しようと思ったタスクがあるのだけれど、こういうときはダメである。
「ご飯食べてダラダラするか…。」
こういう時は外で食べてもいいのだけれど、なんだかより罪悪感が増す気がするので自分で作って食べる。大体鍋だけれども。
豚肉と野菜を適当に煮て、適当に味つけをして食べる。旨い。こういう時にはこういう料理を食べるのがいいな。
YouTubeを一通りパトロールした。
「なんか物足りないんだよなあ…。」
ダラダラしたあと特有の焦燥感に駆られる。よくあることだ。大体そんな時には外に出ないとうまく寝られない。これが私のトリセツというやつだ。
おもむろに時計を見ると、20時。あのお店の開店時間だ。
「よし、行くか。」

(続く)

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著者 部長(ぶちょう)
 東大院生。ときどき薬剤師。
 忙しい日常にホッと一息を作り出せると幸せ。
 好きなことは散歩・読書・地図を眺めること。
 やわらかであたたかい言葉を紡げるようになりたい。

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