Vol.6 東大SPHに進学する前と後の自分の変化について見つめてみた

薬剤師の公衆衛生大学院体験記

薬剤師で東大SPHに在学している越川翔太です。
数ある記事の中から選んでくださりありがとうございます。

今回は東大SPHの2年間の学生生活を振り返ってみて、「大学院生活で変わったこと」と「将来についての想い」を整理してまとめてみようと思います。

1. 前置き
東大SPHに入学する前の私の状況をお伝えしようと思います(少し前置きが長くなってしまいますが)。私立中高→私立大薬学部→大学病院勤務(薬剤師)という歩みをしてきました。

1-1. 学生像
めっちゃ成績が良い学生、とかではなく「勉強をしている姿を見られるのはかっこ悪い」「ギリギリで乗り越えていくのはかっこいい」のような「ちょい悪」に憧れている男子学生だったかと思います(今もある気がする)。
中高時代は部活(バスケットボール)に明け暮れていたり、文化祭実行委員会に入り浸ってみたり。大学時代はバイトばかりしていて、毎回試験前に徹夜が当たり前でしたし。進級が出来ればそれでいいという精神のもと、中高時代は体育だけが評価10、大学時代も評価優が取れたのは実務実習しかなかったのではないかな?と思います。

裏を返すとそれくらい、昔から実技や実践が好きで重んじているのだと思います。

1-2. 大学時代の展望
学部生時代に志していたことが「母校の薬学部の先生になる」ということでした。薬学部の先生になるにはやっぱり学位(博士)が必要かと思いつつ、「でも特に極めたい領域ないしな…」、なんて思っていました。
憧れていた先生に、「母校の系列ではない外部の病院に一度就職して、自分の専門を見つけて極めて戻ってきたらいい」という教えに背中を押され、外部の大学病院に就職を決めました。
就職先の大学病院で自分の専門領域を見つけよう、と模索する日々でした。

1-3. 社会人像
専門領域を探すために「なんでもやってみる」をモットーに働いてきました。ひとまず薬剤師として一人立ちしようと四の五の言わずに手を動かす!みたいな働き方でした。
抗がん剤・抗菌薬・病棟・手術室・集中治療室…などなど思い出はたくさんありますが、薬学という領域では専門領域を決めることが出来ませんでした。どれもピンとくるものがなかったのです。
私が興味が出たのはどちらかというと自分が勤めていた病院では見えない(関与できない)医療の世界でした。それは病院にかかる前や、退院した後のことです。医療制度や社会の仕組みから、「病気」ではなく「健康」に関心が出て、こういう領域を知ってみたい!と思い始めました。

1-4. 大学院進学を希望
興味が見つかった後はスムーズでした。領域は「薬学」ではなく「公衆衛生学(Public Health)」であること。専門の大学院があること。試験勉強が必要であること。などなど。
ありがたいことに合格をいただき東大SPHへの進学を決めました。

2. 大学院生活で変わったこと

2-1. 自分の存在がいかにちっぽけであるかということ
いや、それかい!って感じかもしれませんが、本当に痛切にそう思っています。年月が経過するごとにますますそう思っています。

  1. 薬学しか知らない自分では薬学で対処できる課題しか発見できない
  2. 大した人生経験(特に失敗の経験)がない自分では、そもそも課題(特に世の中の理不尽など)を発見することができない

入学前の私は、自信満々で「世界を変えてやる」くらいな心持ちだったと思います(お恥ずかしい限りですが)。笑
入学して色々な経験をした中で、かなり慎重に物事を考えるようになったと思います。自分の中で正解だと思うものを見つけ出しても終わりにせず(できず)、違う側面で考えるとどうか?見落としているものはないか?と自問自答するようになりました。

他人の力を借りることも出来るようになりました。以前の私であれば唯我独尊感がありましたが、今は周りの他人を上手に頼ることで、違う側面で考えられるようになりました。

自分はちっぽけだなあと思いつつ過ごせるようになったことは、大きな変化(そして収穫)だったかと思います。

2-2. 自分の強み弱みを周囲との相対で考えるようになったこと
同期や先輩後輩・先生方が本当にすごすぎて、私の強み・得意は全く歯が立ちません。一瞬だけ病んでいた時期もあったのですが、ある時を境に大丈夫になりました。
以前の私であれば、さらに自分の強みを伸ばして、他の人にも対抗しよう!と考えていたと思いますが、今は違います。
自分の強み・弱みを知った上で、「この人(あるいは集団)であれば私が強みだと思っているものは相対的に強みにならないけれど、私が弱みだと思っているものは相対的に強みになる」ということです。ややこしくてわからなくなってしまいました。笑
自分の強み・弱みは、自分がいる場所によって強み・弱みに変わり得るということです。

自分がいる集団によって求められる役割やスキルセットは変わるし、変えていけばいいんだ、と思って気が楽になりました。

2-3. 逆算思考の頻度が減ったこと
逆算思考:将来の目標を設定して、そこから逆算して現在のやることを決める思考のこと
逆算思考を無意識のうちにすることが多かったと思います。この思考方法は目標へ至る経路が明確な場合(受験・資格試験、先駆者がいる生き方など)ではかなり効果的かつ効率的であるといえます。
一方で目標へ至る経路が不明確な場合(状況に大きく左右されるものを目標とするなど)では逆算思考は難しいと考えています。

こういった場合では現在行っている(あるいは行える)行動が未来にどういう結果をもたらす可能性があるか、それは自分の目標に近づけるか、という思考の方が有効そうです(逆算思考ならぬ積み上げ思考など言うようです)。

整理すると前者がPlan(計画)→Do(実行)、後者がDo(実行)→Plan(計画)の流れです(少なくとも私は)。どちらにもメリット・デメリットが存在しますので、使い分けが必要であるのだと思います。
私は今まで逆算思考で切り抜けることが多かったですが、人生の全ての思考を逆算思考のみで完結することは出来ないことを身をもって実感しています。

不確定要素が多い領域では積み上げ思考の方が合っていると思っています。
最近は積み上げ思考の方が逆算思考よりも頻度としては多いと感じています。

3. 将来についての想い
自分を色々な場に身を置いて、そしてその場で生かせる自分の特徴(強み・弱み)を生かして貢献する、ということをひたすら行う人生にしていきたいな、と考えています。
一カ所にずっと定住するのではなく様々な集団・様々な領域・様々な価値観に触れつつその環境で自分が貢献出来るなにかを提供する、そして自分をアップデートしていく、という感じでしょうか。ワクワクしますね。
世の中の多数の流れである「専門性を極める」「スキルを磨く」とは異なる生き方になるかもしれません。外れ値がいてもおもしろいかな、と思っておりますので、これからもおもしろがって活動を見守っていただけると嬉しいです。

なお、生き方の重要な割合を占める「仕事」に関しては、今年の年初時点での考えをまとめておりますのでそちらもよろしければお読みいただけますと嬉しいです。

さいごに
東大SPH生としての執筆はあと1記事(キラキラ業績系の記事など?)で締めくくられるかと思います!
卒業後も博士課程の学生として不定期ですが更新していきます。気長にお付き合いいただけましたら幸いです。

同じサイトには「てくてく放送部 部長・副部長」というPodcaster、YouTuber、Blogerも活動しておりますので、もしよければ覗いてみてください。

創業者(部長)はメンタルが落ち込んで眠れなくなった経験や、働いている時に誰かに背中を押して欲しくなった経験があります。毎日忙しく、時に困難な生活の中で、少しだけ潤いをもたらせるような、そんなサービスを作るべく活動しています。

サービス一覧は以下からどうぞ。

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最後までお読みくださりありがとうございました!
また次の記事でお会いしましょう!!
越川翔太

筆者
越川 翔太(こしかわ しょうた)
都内私大薬学部卒(6年制)を卒業後、都内大学病院で病院薬剤師に3年間従事。
その後東大SPHに進学中。都内調剤薬局にて修行も同時に行なっている。
キャリアについていつも悩んでいるが、将来について考えるのが好き。
「越川 翔太」は大好きな祖父からもらって名乗っているペンネーム。

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