#7_副部長のひとりごと_名古屋旅行記②

副部長のひとりごと

最初の目的地はコメダ珈琲だった。部長たっての希望で、モーニングの小倉あんバタートーストを食べることにした。太閤通口のほうのエスカという地下商業施設にあるコメダ珈琲を目指した。人が多い名古屋駅だけど、それでも東京駅に比べるとゆとりがあって、なんだか体が楽だった。エスカのコメダ珈琲はしかし長蛇の列ができていた。周りのカフェはまだ開店していないところが多く、客が集中しているようだった。並んでもよかったのだけど、名古屋から一駅移動して金山駅のコメダ珈琲へ行くことにした。

金山駅は人生で二度目の「撒き」の現場…否、そんな話はいい。朝だったので人は少なく、駅前のコメダ珈琲は空いていて快適だった。部長はカフェラテと小倉あんバタートースト(この店舗はバターではなくマーガリンだったけど)、私はウインナーコーヒーとイチゴジャムトースト、そして卵ペーストを注文した。イチゴジャムトーストに卵ペーストを乗せてたべるととても美味しかった。部長も念願の小倉あんバタートースト(マーガリンだけど)に満足した様子だった。

金山は何度も来た場所だけれど、朝の時間の金山には実はあまり来たことがないということに気が付いた。こんなに人が少なくて過ごしやすい金山もあるんだなあと思った。

金山から熱田方面へ、大津通を歩いてみることにした。「てくてく放送部」の名前の由来は部長と私が無類の散歩好きであることからきている。

恵比寿に住んでいた頃には、恵比寿から皇居まで歩き、皇居を二周して帰ってきたこともある。歩いているときはだいたい、空想にふけっている。昨晩見た変な夢の詳細を思い出したり、思い出せない部分を補完して物語に仕立てたり、そんなことをしている。

部長と一緒に散歩するようになって、歩きながら会話することもできるようになった。でもたまに空想に入ってしまって、話半分で聞いているときもある。部長も部長で自分の世界に入って出てこないときもあるので、まあお互い様なのである。そう、我が部の「てくてく」は割と自由である。だから楽しい。旅先でもてくてくしたい。さっきまで雨が降っていたとは思えないほどの日差しと、東京とはまた違った湿度を感じながら、散歩が始まった。

大まかには熱田神宮を目指して歩いていたのだけど、昔住んでいた神宮前駅のアパートを見に行きたくなり、大津通から線路側に入った。歩道橋を渡るとき、大きなイオンが見えた。熱田のイオンだ。新幹線が止まる駅から一駅しか来ていないのに、地方にあるような大きいイオンがあるなんて、首都圏とはまた違ったまちづくりがあったんだなあと、部長が感動していた。金山は飲食店が多いけれど、少し熱田側に進むと住宅や工場、倉庫などが並んでいる。ビルは高くないが敷地が広くゆったりとしている。看板が大きい。

神宮前駅すぐのアパートは相変わらずそこにあって、住んでいた当時に工事中だった隣のアパートも完成して人が住んでいた。ここの工事、たまに朝7時前から音がうるさくて、クレームの電話を入れたなあ、なんて思い出した。部長がアパートの前で写真を撮ってくれた。

神宮前駅は随分と様相が変わっていた。昔あった駅直結の商業施設は跡形もなく、新しい商業施設が建っており、随分と住みやすそうになっていた。熱田神宮側には小さな飲食店街のようなものも建設途中だった。もはや私の知っている神宮前駅ではなかった。私の知っている神宮前駅はもっとこう、鬱蒼としていて、薄暗くて、古びていた。なんだか綺麗になっちゃって、日の光が差しちゃって、若干の寂しさがあった。私が変わったように、あなたも変わったのね、ふーん、なんて思った。昔の恋人が自分のことをいつまでも好きでいてくれると錯覚しているみたいで、やだやだ、やめよやめよ、と思った。

部長は神宮前駅あたりをとても気に入ったようで、住んでみたいねと話していた。名古屋駅までも名鉄線で数分で着くし、名古屋駅からは東京にも大阪にも行きやすい。しかも、神宮前駅からだと空港までも行きやすい。特急で30分弱で行けるようなのだ。徒歩圏内に大きいイオンもあるのに、都市部でもある。うーん、とても魅力的だ。

熱田神宮は樹木が綺麗なところだった。樹木のトンネルになった参道は空気が涼やかで好きだった。一体何を試されているんだろう、人間を試す神なんて所詮人間の創造物だよ、なんて身も蓋もないことを考えさせるような長~い階段が無いところもとても好きだった。暑すぎて参拝どころじゃなかったのだけど、せっかくなので一応参拝して、そそくさと退散した。熱田神宮には三種の神器のひとつである草薙の剣が奉納されているとかで、私的にはそこは結構ポイントだったのだけど、部長にそれを言ってもあまり響いてなさそうだったのが面白かった。確かに、どうでもいいっちゃどうでもいいよね。三種の神器。

熱田神宮を出て、今回の旅の最大の目的である蓬莱軒へと向かった。蓬莱軒はひつまぶしの名店だ。11時半に受付開始なのだけど、すでにたくさんの人が受付に来ていた。11時過ぎに受付した私たちは、13時頃に食事できることになった。大人気店であるがゆえのこの待ち時間。コメダ珈琲のモーニングからの蓬莱軒を予定したので、お腹がちゃんと空いてくれるかどうか心配だったけれど、暑い中しっかり散歩したのでどうやら大丈夫そうだった。13時まで、神宮前駅の近くの熱田区立図書館で過ごすことにした。

熱田区立図書館はいいところだった。椅子がふかふかしていて、長時間座っていてもお尻が痛くない。昔ここに住んでいた頃は、たまに本を借りに来た。ここで12時40分頃まで各自休憩とした。部長は名古屋の歴史についての本を読んでいた。私はうつ病闘病患者の家族のエッセイを読んでいた。お互い好きな本にあたったらしく、ついつい時間を忘れてしまった。

~名古屋旅行記③へ続く~

【筆者について】
副部長(ふくぶちょう)
関西出身・関東在住・会社員
最近のできごと コールスローを食べすぎてしまう

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